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【コラム】血栓症のリスクが低い低用量ピル「アリッサ」が発売されます!

執筆者の写真: みらい編集長みらい編集長

 血栓症のリスクが低い、新しい低用量ピル「アリッサ」が、12月3日(火)から発売されることをご存知でしょうか?ピル服用に伴う血栓症のリスクに不安を抱いている方にとっては、とても明るいニュースになりそうです!

 そもそも、なぜアリッサは「血栓症のリスクが低い」と言われるのでしょうか?ドクターに尋ねてみました。



【ドクターの見解】

 アリッサが「血栓症のリスクが低い低用量ピル」と言われる理由は、従来の低用量ピルには含まれていなかった「天然型エストロゲン」が配合されているところにあります。

 このエストロゲンが、①カラダの一部にしか作用しないこと②血栓を溶かす血液機能の低下を抑えられることから、アリッサは「血栓症のリスクが低い低用量ピル」として期待されているのです。順に解説していきましょう。



①選択的に作用するエストロゲン

 「アリッサ」は、日本で初めての「天然型エストロゲン」を配合した低用量ピルです。エストロゲンは「卵胞ホルモン」とも呼ばれる女性ホルモンの一種で、低用量ピルにはこのエストロゲンのほか、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンも含まれています。


 これまで日本で販売されてきた低用量ピルには、すべて「エチニルエストラジオール」という合成型エストロゲンが配合されていました。通常のエストロゲンは水に溶けませんが、この合成型エストロゲンは「エチニル基」をくっつけて水に溶けやすくしたせいで、血栓症のリスクを高めることになりました。そのため、「エチニル基」がついていないエストロゲンが求められていました。


 「アリッサ」には、おなかの赤ちゃん(胎児)の肝臓から分泌される「エステトロール」という天然型エストロゲンが配合されています。このエストロゲンはカラダの一部にしか作用しないため、従来の低用量ピルと比べて血栓症のリスクが低いと言われているのです!こうした理由から、更年期障害にお悩みの方も用いることができるよう研究が進んでいますし、乳房への作用がないことから、乳がんへの不安も低減できます。

 この天然型エストロゲンが作用するのは、腟や子宮内膜、骨や血管、脳などです。つまり、従来の低用量ピル同様「(脳からの)排卵(命令を)を停める」「子宮内膜の増殖を抑えて月経や月経痛を軽くする」といった効果には期待ができるわけです。




②血栓を溶かす血液の働きを妨げないエストロゲン

 「アリッサは血栓ができにくい低用量ピル」と言いたいところですが、実はちょっと違います。より正確に表現するならば、「アリッサは血栓を溶かす機能を邪魔することが少ない低用量ピル」です。

 私たちの血液には、血栓を溶かす「線溶」という機能が備わっています。そのため、小さな血栓ができること自体はそれほど問題ではありません。問題となるのは、線溶の機能が低下することです。

 従来の低用量ピルに含まれるエチニルエストラジオールは、線溶の機能を低下させることが分かっています。一方でアリッサに含まれるエステトロールは、この機能の低下を抑えられます


 販売元となる富士製薬が公表しているアリッサの資料には、「血液凝固線溶系の生化学的指標の変化が対象薬と比較して軽微」と記されています。これは何を意味するかというと、「血栓を溶かす物質の増減を調べたところ、従来の低用量ピルではこの物質が減少したが、アリッサではあまり減少しなかった」ということです。要するに、従来の低用量ピルと比べて血栓を溶かす機能が低下しにくい=血栓症のリスクが低い、というわけですね。





 アリッサは従来の低用量ピル同様1シート28錠で、実薬24錠/偽薬(プラセボ)4錠で構成されています。価格は約5,000円で、保険適用の場合1,500円ほどになります。販売開始後しばらくは一度に処方できる量が制限されることが予想されますし、最初は取り扱いクリニックも少ない可能性があるので、気になる方はかかりつけ医に確認したり、処方予定のクリニックを探してみるといいかもしれません。


回答医:松田貴雄先生


【参考】血栓症のリスクが低い/ないと言われるピル一覧



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