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【ミレーナ】出産後の月経困難症の克服

 富山市で140年の歴史を持つ「きものブティックあおき」の5代目女将である青木さとみ(45)さんは、3人のお子さんを出産後、産婦人科を受診した際に月経困難症と診断され、以来IUS(ミレーナを使用しています。IUSは黄体ホルモンを子宮の中に少しずつ、長期にわたって放出する子宮内システムで、一度装着すれば最長5年間、避妊効果とともに生理の経血量が軽減され、生理痛を緩和する効果もあります。ライフステージの困難な局面を乗り越え、多忙な日々を送る青木さんに、IUSの体験談とともに、健康との向き合い方についてお話を伺いました。(取材:松原渓編集部員)


1884年の創業以来140周年を迎えた

きものブティックあおきの5代目女将、青木さとみさん



創業140年目の老舗女将に。片頭痛と付き合いながら、子育てと仕事を両立してきた日々


 「きものブティックあおき」は、今年で創業140年目を迎えました。私は、母の跡を継いで3年目になります。中学生~高校生の子どもが3人いるので、朝、子どもたちを学校に送り出してからお店に行き、夜6時半頃まで仕事をしています。

 私は高校の時から片頭痛が本当にひどく、頭痛外来で治験の注射を受けていたほどでした。当時は朝起きられず、痛みで吐いてしまう日もありました。特に大変だったのは20代後半から30代前半です。当時は子育てと仕事の大変な時期が重なっていました。離婚した後は特に大変でしたが、それから6、7年経って最近は子どもたちも大きくなり、ようやくお仕事も安定してきました。

 1人目を出産したのは29歳の時で、3人目が33歳の時です。妊娠している間は、不思議なことに片頭痛がパタッと止まったんです。「出産はデトックス」と言われることもありますが、私はもともと持っていたアトピー性皮膚炎が緩和したことも含めて、カラダは良い方向に変化したと思います。

 現在、私はIUSを使用しています。黄体ホルモンのバランスが妊娠時と同じになったからか、片頭痛は解消されつつあるように思います。


◎産婦人科医、松田貴雄先生の解説
・妊娠時は、黄体ホルモンが非常に高いレベルで保たれます。黄体ホルモンはカラダをリラックスさせる「副交感神経」を優位に働かせるホルモンなので、血管の収縮が抑えられて、片頭痛が緩和されたものと推測します。
・IUSにより持続的に放出される黄体ホルモンは、通常子宮内にのみ作用しますが、実は血中にもかなり移行しています。これにより片頭痛が軽快している可能性が考えられますが、個人差によるところが大きいので、必ずしも全員に当てはまるものではありません。


月経困難症をきっかけに、IUSを使用するように


 IUSを使うようになったのは、3人目を出産した後で、10年ぐらい前です。当時は生理痛で腰が重い症状があり、受診していた産婦人科の先生にIUSを勧められました。私はそれ以上の出産を望んでいなくて、IUSは避妊効果もあるので使用目的に適っていました。医師からは、「IUSは副作用が少なくて、一度装着すれば最長で5年間は交換しなくていいので楽」だというメリットを説明していただきました。私は忘れっぽいところがありますし、食事の時間も当時は不規則でしたから、ピルは食後に飲み忘れてしまう可能性があったので、ピルよりもIUSの方が合っていたと思います。

 副作用について「もしかしたら装着後は生理以外の出血があるかもしれない」と言われましたが、装着時の痛みはほとんどなくて、5分もかからずに終わりました。費用は保険適用で当時、2万円弱だったと記憶しています。ナプキンの金額だって重なれば大きな額になりますし、メリットを考えれば「高い」とは感じませんでした。

 実際に使用してみると、今までの生理が嘘みたいに楽になりました。生理がこなくなるわけではないのですが、量が少なく、ナプキンを使わず薄いパンティーライナーでも大丈夫ですし、2日か3日ぐらいで終わります。着物を着ていることが多いので、下着を汚さずに済む上に、生理痛による腰の痛みもなくなったので、「なんて楽なんだ!」と。前述のように、片頭痛が解消されつつあるのも助かっています。これまでのところデメリットはまったく感じていないです。IUSは避妊の効果もありますが、生理痛がひどい人にもぜひ、おすすめしたいですね。

 装着後は定期的に産婦人科で診察を受けているわけではないのですが、5年目の交換時期が子宮がん検診と重なったので、その時に交換してもらいました。診察するお医者さんにもよると思いますが、交換時期を忘れないように案内などいただけたら、ありがたいと思います。


創業140年目の5代目女将が、創業100年を過ぎた地元の喫茶店の前で




子育て、仕事、離婚。大変な時期を乗り越えて、片頭痛ともうまく付き合えるように


 中年期に入ってからは自分の体の限界がわかって、日々のお仕事と家のことと、いろんなことができるようになってきたと思います。今は片頭痛が出ても、普通の市販薬で乗り切れるぐらいになったので、薬を服用しながら無理をしないように気をつけています。もうちょっとしたら更年期に差し掛かって、体調やホルモンバランスの変化に気をつけなければいけない時期に入るのかな、と思っているんですけれどね。

 健康面では、特に頑張って運動しているということはありませんが、睡眠がすごく大事だと感じているので、0時ごろまでに寝て、7時間くらいは眠れるように心がけています。夜に仕事で出かけた時でも必ず終わりの時間を決めて、無理をしないように自分の体と上手に付き合っています。継続的に飲んでいるサプリメントはないのですが、時々ロイヤルゼリーを飲みますね。

 バランスの良い食生活も大切ですよね。うちのブティックには小さな社員食堂があって、バランスの良い食事を作ってくれる女性スタッフがいるので、それを美味しくいただいて、個人的には発酵食品を意識的に摂るようにしています。ただ、着物でお客様と一緒にお出かけしてランチをすることもありますし、間食もよくします。

 大変だった時期を乗り越えられたのは、「周りの人たちがサポートしてくれたから」ということに尽きます。土日も仕事をしている中で、自分一人だったら仕事も子育てもできなかったはずです。私の母や母の妹、祖母や父が近くでサポートしてくれて、富山市がやっている子育てサービスも利用しました。そのようなサポートのおかげで、仕事を続けてこられたのは幸せでした。



娘もピルを服用するように。信頼できる人との出会いを大切に


 今のお仕事をするようになってから、私のようにシングルになった同年代の方と話すことが多く、同じ立場の女性が多いことを知りました。

 私は3人姉妹で引っ込み思案な長女でしたから、レールの上を歩いてきたようなものですが、それでもいろいろな方との出会いの中で、自分の枠から一歩俯瞰して見ることができるようになりました。そうしたら出会いが広がって、そのおかげで今があると思っています。

 今は16歳の娘がピルを服用しています。コロナ禍の前ぐらいに、産婦人科医で富山県議会議員の種部恭子先生という方に出会いました。ご縁があって彼女の「エンジョイエイジング」というトークイベントをうちの会社で5、6回していただいたんです。その内容を聞いて、女性の体のことや、いろいろなピルの話、更年期のお話など、初めて知ることが多くありました。

 それまでピルは避妊のイメージしかなかったのですが、そうではなく、生理痛がひどくて大変な人にも有効だということを種部先生からお伺いして。娘が受験生で「勉強に影響しないようにしたい」と言ったので、ピルの話をしたら「やってみる」と言うので、服用するようになりました。

 私自身は今のところ至って健康ですが、もし更年期で何かあったら種部先生に相談しようかなと思っていますし、相談を受けた時は「この先生に一回相談してみたら?」という感じで種部先生をご紹介することもあります。

 うちのお客様は99%が女性で、トークイベントで種部先生がピルのことをお話しされた時も、特にご年配の方には「避妊薬=怖い」というイメージを持っている方が多かったので、まず意識を変えるところからだと思いました。

 子どもたちに関しては、急に産婦人科を受診するのは勇気がいると思うので、オンライン診療の選択肢が増えるとすごくいいと思います。あとは、信頼できる自分の好きな人の話を聞いてみると、勇気づけられることもあると思います。横のつながりを生かすのは女性の得意分野だと思いますから。私自身、インターネットで調べて情報を得ることは少ないですし、人と人とのつながりの中で、信頼できる情報に耳を傾けるようにしています。




女性が輝く社会を目指して、一歩を踏み出してほしい


 「きものブティックあおき」は女性のお客様がほとんどなので、「女性が自分らしく生きる」をテーマにしています。富山の女性は仕事をして、お家のこともして、介護もして……というように、自分をおろそかにしている方が多いと思うのですが、その方たちが人生を楽しむひとつの方法として着物があると思っています。だからこそ、「きものブティックあおき」が「自分らしく人生を楽しむ」ことのお手伝いをできれば嬉しいですね。私は旅行に行くのが好きで、国内はもちろん、海外に行った時も必ず着物を着ますし、それが楽しみのひとつになっています。

 今は女性が社会で活躍できるように社会全体が後押しするような風潮がありますが、実際に環境が整っているかというと、まだまだだと感じます。「とりあえず女性を置いておこう」という感じで、お飾りのように役職につけていることもあります。子どものいる女性のサポートなども整備が追いついているかといったらそうではなく、そこがアンバランスになっているんじゃないかと思います。

 富山の働く女性の中で、管理職の割合はものすごく低いです。「私なんて」って考えてしまう女性も結構多いんですよね。そういう女性の意識改革もそうですし、周囲の男性が封建的な考え方を持っているなら、改める必要があるんじゃないかと感じます。「結婚するべき」とか、「家に入って子育てをするべき」、「旦那さんの世話はできているのか」といった考え方が踏襲されてしまうから、結婚に夢を持てない女性が多くなっていると思うし、実際、富山から県外に流出してしまう人も多くいます。その世代間ギャップを埋めるためにも私自身、女性が働きやすい環境が整うように仕事の楽しさを伝えていきたいですね。

 同じような悩みを持っている女性には、「みんながこうしているからああしなければいけない」ではなく、自分が大事にしたいことは何か、どういうふうに生きたいかを見つめ直して、一歩を踏み出す勇気を持ってほしいと思います。自分のことが後回しになっていると、何が好きで何が嫌いかもわからなくなって「どうしたらいいのかわからない」となってしまうと思いますから。自分にそれを問い直すことは、自分らしい生き方につながると思います。




きものブティックあおきの正面にそびえる天文台(きものブティックあおき撮影)



天文台のある呉服店 きものブティックあおき(富山県富山市)

 

【Profile】青木さとみ

富山県出身。創業140年の「きものブティックあおき」5代目女将。3人のお子さんを出産後、シングルマザーとして仕事と育児を両立。3年前に母から事業を引き継ぎ、女将として「女性が自分らしく生きる」をテーマに着物の魅力を伝えている。産婦人科医で月経困難症と診断されたことがきっかけで、IUS(Intrauterine System)を使用している。


取材後記(松原 渓)

 3人のお子さんを育てながら、140年の由緒あるブティックを女将として切り盛りしている青木さとみさん。とても朗らかで柔らかい雰囲気をお持ちで、インタビューは終始和やかでした。吐きそうなぐらいの片頭痛と付き合いながら仕事と育児を両立してきたエピソードに、「母は強し」という言葉が浮かびました。

 IUSの体験談はなかなか目にすることがないので、青木さんのお話を聞いて、費用面やメリットも含めて今後、需要が増していくことは必至だと思いました。時々、ピルを飲み忘れてしまう私にはちょっと羨ましいです。10代の娘さんもピルを活用しているとのこと。同じように月経困難症を抱える女性は、自分に合った形で付き合っていく方法を見つけたいですね。

 




2 comentarios


山本 明日香
山本 明日香
27 ago 2024

片頭痛の緩和にも女性ホルモンが作用している可能性があるとは!

IUSの体験談も初めて聞いたので、とても参考になりました。

女性ホルモンとうまく付き合うことが、様々なカラダの不調を緩和するカギになるように思いました。

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山本明日香さん

私も今回初めて、IUSで片頭痛が緩和されたというお話を伺いました。

「黄体ホルモンのバランスが妊娠時と同じになったからかも?」という青木さんのお話も、「必ずしも全員に当てはまるものではない」というドクターの解説も、編集しながらとても勉強になりました。

女性ホルモンに関する研究がもっと進んで、日常生活がより快適なものになったらいいですね!

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