2024年パリパラリンピック・車いすテニス女子シングルス、ダブルスで2冠を獲得した、上地結衣選手(30)。実は2年ほど前から、フェムライフ監修医の松田貴雄先生指導のもと、低用量ピル「ジェミーナ」を服用しています。黄体ホルモン単剤、低用量ピルと2種類の薬を試してきた上地選手は、どんな思いでピルの服用を公表すると決めたのでしょうか。(第3回/全3回)

◆発信しようと思えたのは「松田先生と出会えたから」
上地選手
松田先生と出会わせていただいた、というのが大きくて。私の方が年齢も低いし、おこがましいですけど、すごく好奇心のある方ですよね。栄養素のことや食事の仕方など、いろんな分野に精通されていて、お薬の処方に限らず「今こんなことをやっていてね」といろんなお話しをしてくださいます。
一般の方だと対外的に(ピルを飲んでいると)お話する機会はないですけど、自分はいろいろとお話させていただく機会があるからこそ、発信してもいいのかなと思えました。それで誰かにとって少しでも有意義なものになるのであれば、自分もご協力したいなと、松田先生を見ていて思わせていただきました。
あとは、ピルに切り替えたタイミングでちょうど後輩の選手から相談を受けたというのもあります。「やっぱり分からない人っているんやな、自分だけじゃないんやな」と思わせてもらいましたね。
松田先生
自分はちょっと天邪鬼なので、「これが正しい」と言われると「本当かな?」と思っちゃうんです(笑)。それに選手を診ていると、いろいろと質問されるわけですよね。「これってどうですか?」と聞かれたときに、「分かりません」とは言いたくないんですよ。なんらかの形で応えてあげたいと思うんです。選手のほんの、ふとした一言が…要するに「医者は患者が育てる」ということですよ。「患者さんはこんな痛い思いをしている、こういう症状がある。それを治してあげたい」と思って改善していくのが医療、医者だと思っています。
上地選手
全然違う分野のお話でも、「分からない」とは絶対におっしゃらないですね。
◆医師に望むことは「分からない、と言わないで」
上地選手
今回の対談のお話をいただいた際に自分で振り返ってみても、女性の“ご相談できる人”がいなかったんです。頼みの綱は先生になるんですけど、「症例がない、今まで聞いたことがない」と言われると、「じゃあ自分はその枠に入っていないんだ、自分の言っていることは認められないんだ」と、少し悲しい気持ちになります。そうなると、その次が(悩みがあっても)言いづらくなると言いますか…そういった経験をしたので、やっぱりもっと悩みを聞いてほしいな、と思ったんですね。だから、アドバイスをする立場の方には、悩んでいる側の立場にも立ってみていただいて、どういうことに悩んでるのか、もう少し聞く耳を持っていただけたらいいなと思います。聞いてくださる方の受け取り方が変わっていってくれたら、もっともっと皆さん(悩みを)言いやすくなるんじゃないかなと思って、今回のお話を受けさせていただきました。
◆ピルで生まれたのは「アイデアが出る頭の余力」
上地選手
2023年に引退された車いすテニスのレジェンド・国枝慎吾さんは、今の私の年齢(30歳)プラス10年近く現役を継続されて、タイトルもたくさん取られました。正直、あそこまでを見せられてしまうと「まだまだ自分もできるのかな」と思いますし、次の世代の子たちに向けても、少しでも自分のやっている姿を見て「いいな、楽しそうだな」と思ってもらえる機会が増えるのであれば、体力や精神力が続く限りは挑戦したいと思います。
パリパラリンピックの決勝戦の後にも、「もっともっとこういうプレーがしたい」とか、「こういうプレーをすればもっと楽に勝てるんじゃないか、相手にダメージを与えられるんじゃないか」とか、いろんなアイデアが出てきています。アイデアが出る頭の余力があるのは…数年前にお薬(黄体ホルモン単剤)で悩んでいた頃は(詳しくはこちら)、まず自分の体調だったり、満足に試合ができるかどうかに頭の容量を取られてしまっていたので、なんの心配もなく競技に専念できる環境というのは、あらためてすごく重要だと思います。
自分も少しずつ年齢が上がってきて、いろんなことを経験してきているので、その立場や場面場面での自分なりの表現もできると思っています。車いすテニス、障がい者スポーツも、まだまだ知識やデータが少ないと思うんです。なので、少しでもお役に立てたらいいなと思います。(おわり)
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