都内在住で、金融系の企業で働く久世瞳さん(30=仮名)は、大学生のときに留学先で卵巣嚢腫が見つかり、片側の卵巣を摘出しました。なんの前触れもなく襲った激痛に、異国の地で即日手術を受けることになった久世さん。当時のエピソードと、その経験を経た今思うことを伺いました。(取材:みらい編集長)
![](https://static.wixstatic.com/media/a1b039_4aaa8bbc4087416db3b5dfe74905b798~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_653,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_auto/a1b039_4aaa8bbc4087416db3b5dfe74905b798~mv2.jpg)
卵巣を摘出した久世さん (画像はイメージです)
◆生理痛は重くないのに…激痛で見つかった卵巣嚢腫
私はアメリカに留学していた大学生の頃、卵巣の摘出手術を受けました。生理痛がさほど酷いわけでもなかった私にとって、卵巣嚢腫が見つかったことは青天の霹靂でした。
生理前のある日、鎮痛剤の効かない腹痛と胃痛に襲われて、学校の保健センターに駆け込みました。最初は「重い生理痛かな?」と思っていたものの、次第に立っていられないほどの痛みへと変わっていき、最終的に大学病院で検査を受けることになりました。その結果、片側の卵巣に捻転(ねじれ)と嚢腫があることが判明したのです。
日本とは医療制度が異なるアメリカだからでしょうか、その日のうちに手術を受ける流れになりました。検査後、痛み止めの点滴を打ちながら、医師から病状と手術についての説明を受けました。日英バイリンガルの友人が一緒にいてくれたので、とても心強かったです。帰国直前だったため保険が切れており、痛みに耐えながら慌てて保険の更新を行ったことを覚えています。
卵巣を摘出するにあたって唯一不安だったのは、将来の妊娠に影響が出ることでした。医療系通訳者の電話サービスを介して医師に質問をしたら、「宇多田ヒカルさんも卵巣嚢腫で手術を受けたけれど、出産しているよ」と教えてもらい、少し心が軽くなりました。
内視鏡手術だったため、幸い傷は小さく済みました。今でもへその横に手術痕はありますが、水着でも下着でも隠れる位置です。手術後は麻酔が切れるのを待って、その日のうちに帰宅しました。友人宅で過ごしていたので、ありがたいことに家事をする必要がなく、安静にしているぶんにはなんの問題もありませんでした。ゆっくりと歩くこともできましたが、笑うと痛みが出るので、しばらくは真顔で過ごした記憶があります。
手術後の通院はなく、処方された抗生物質を飲みきったところで治療は終了しました。術後2週間以内にはニューヨーク観光に出かけた記憶もあるので、激しい運動をしなければ、通常の生活ができる程度には回復していたと思います。
◆もし検診を受けていたら、何かが変わったかも?
私が住んでいた地区では、自治体による子宮頸がん検診が行われていたと思います。タラレバですが、積極的に受診して病院に通う機会を作っていれば…と思うところもあります。社会人になると会社で婦人科検診を受けるようになりますが、学生のうちはなかなか受診機会がありませんよね。私は生理痛も酷くなかったので、産婦人科に行った経験さえありませんでした。検診が病気を見つける唯一の機会だったかもしれないと考えると、後悔もあります。
現在は美容目的で低用量ピルを服用していますが、今思えば、当時の私はピルの存在すら知らなかったと思います。ピル処方で通っている産婦人科では、「現代女性は昔に比べて高齢出産だし、出産の回数も少ないから、生理の回数が多すぎて負担になっている」と教えてもらい、驚きました。ピルを服用すれば卵巣や子宮を休めることができるはずですが、アメリカの病院ではピルを勧められることはありませんでした。肌荒れ対策について調べる中でピルと出会えたことは、美容の側面でも婦人科系の健康という面でも、とても大きなものでした。(続く)
Comments