ピルケアとは
ピルは避妊薬であると同時に、主成分が女性ホルモンだということをご存知でしたか?
そもそも、ピルを服用するとなぜ避妊できるのでしょうか?
それは、排卵の命令を停めるからです。
ピルの服用=ピルケアを通じて、卵胞ホルモンと黄体ホルモン、この2つのホルモンが同時に女性のカラダの中に存在すると、脳が「妊娠している」と錯覚します。
排卵は脳から卵巣に命令が届くことで起こる現象なので、妊娠していると錯覚した脳が、排卵を命令することはありません。
「今は妊娠中だ」と、脳に錯覚を起こさせるのがピルケアです。
排卵が起こるということは、妊娠できる可能性があるということです。子宮の内膜には血液が集まってきて、ふかふかの厚いベッド(内膜)を作り、受精卵の到着を待ちます。
受精卵が来ない場合や、来てもうまく育たなかった場合は妊娠が成立せず、厚くした内膜が崩れ落ちて、血液が体外に流れ出ることになります。
それを経血と言いますが、一般的にはそういった生理現象が起きるということで、「生理が来た」と言いますね。
生理時の出血量は、子宮内膜を準備をする間の体調等の状況によって変わると言われますが、妊娠を望む場合、なるべく良い子宮内膜、すなわち、ふかふかのベッドが準備されるのが理想です。
ピルケアは卵巣に働きかけるのではなく、脳に妊娠中だという錯覚を起こさせて、排卵を停めることです。
妊娠を望まない若い時期に、毎月の生理で、無駄に排卵させなくても大丈夫です。
排卵の度に、破裂する卵胞
生理そのものを気にすることはあっても、おなかの中で起こる排卵のメカニズムを気にする人は、多くないのではないでしょうか?
排卵とは、卵巣の中にある「卵胞」(=卵子を包んで育てているもの)が破裂して、その卵子が卵巣から飛び出て、卵管に入る行為です。卵管に入った卵子は、子宮にたどり着いて、精子の到着を待ちます。
卵巣には、ばい菌が入らないように、ものすごく硬い膜、イメージとしては「殻」が付いています。排卵が起こるときは、そんな硬い膜を破裂させているのです。
破裂するとき、運悪く、近くを通る血管が破れてしまうことがあります。このとき、少なからず腹腔内に出血が起きて、おなかの中に血が溜まってしまいますが、これを卵巣出血と言います。
排卵が起こることで卵胞が破裂して、少なからず腹腔内に出血していると考えると、かなり危ないことが起きていると言えます。
卵子を温存するという考え
フェムライフの監修医、松田貴雄先生(順天堂大学 医学部産婦人科 客員教授)は、以下のような考えのもと、ピルケアを勧めています。
「ピルを服用することで卵子を温存する」と言っても、卵子にも寿命があるので、永遠に温存はできません。温存してもしなくても、いつか迎える閉経時期はほぼ変わらないと言えます。血栓症の問題があり、現時点で40代の女性にピルケアはあまり勧められていませんが、2024年に血栓症が少ないピルが発売されたら、子どもを望まなくなった時点から連続投与を開始して、閉経までほとんど出血のない人生を送ることも可能になるかと思います。ピルケアをすると卵巣がんのリスクは低下しますし、何より更年期障害が圧倒的に軽減されると推測されます。
若いうちからピルケアをして卵子を温存させることで、将来妊娠を望んだときに妊娠できる可能性が高くなると言えます。体外受精施設の研究では、受精卵の染色体を調べたらその70%に異常があったというショッキングな報告がなされました。そのため、体外受精で子どもが生まれる確率は3割以下になってしまうそうです。妊娠して流産せずに子どもが生まれる卵子の数は、生涯で150個くらいと言われています。初経から順に質の良い卵子を排卵すると考えると、その数はおおよそ、150÷12=12~13年分しかない計算になります。12歳で初経を迎えたとすると、25歳時点では、妊娠のための質のいい卵子はあまり残っていない計算になるので、そのあたりから妊娠率が下がることが考えられます。
現在ほど栄養状態の良くなかった時代は、16歳くらいで初経、20歳くらいで初産を迎え、その後も出産が続いて、20代でほぼ月経がなかったという人も多かったと考えられます。妊娠中や産後の授乳期間に、排卵は起こらないからです。これを踏まえれば、その時代は質のいい卵子が20代~30代で温存されていたと考えられるため、かなり高齢での出産が可能であったと思われます。その結果を推測させるデータが1925年(大正14年)の出産数です。50歳以上で分娩された女性は、3,500人以上いらっしゃいました。現在、50歳以上の分娩は、卵子提供者も含めて年間50人くらいです。この違いは、卵子が老化してしまったからと言うより、妊娠できる卵子が温存されていたというポジティブな面を考える方が合理的です。一昔前の女性たちは、出産数がケタ外れに多かったことで卵子の温存が続き、晩年にも妊娠することが珍しくなかったということです。
できるだけ早い時期からピルを服用して、できるだけ質の良い卵子を排卵させないでおくことが、妊娠につながる可能性がより高まると言えます。この100年のデータを振り返ると、このような考えは、道理にも合っています。何事にも、絶対ということはありませんが、少なくとも、若いうちからピルケアをすることで、将来的に妊娠できる可能性がより高まるということは、断言できます。
みらい編集長
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