【10代・みーぱんさんからの質問】
産婦人科の先生に聞いていいのか分かりませんが、「顔は異性の親に似る」というのは本当ですか。母親から遺伝しやすいものと父親から遺伝しやすいものの違いを知りたいです。
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【ドクターの見解】
「(遺伝子の)突然変異」という言葉は一般に浸透していますが、これは病気と関係する場合に使われることが多い言葉です。これの対になる言葉(=それなりの頻度で出現する遺伝的特徴)は「多型」で、個人の特徴を表現するものです。顔の特徴は、両親から受け継がれた「多型」の集合体です。
多型は1人につき1万個以上あるとされ、すべての多型はDNAの配列で表すことができます。そのため、DNA分析の先進国である香港や台湾では、ポイ捨てされた空き缶に付着した唾液から、それを捨てた方の似顔絵を作ることも可能です。「この多型(遺伝子配列)を持っていると、こういう特徴が出る」という傾向が、それだけはっきりと分かってきているのです。
多型は両親から半分ずつ受け継がれるため、両親どちらの顔に似る可能性もあり、必ずしも「異性の親に似る」とは言えません。しかしながら、男子のX染色体は母親のみから遺伝します(女子は父母双方から遺伝します)。その点においては、男子の顔は母親寄りになる可能性が高いと考えられます。
また、遺伝子の中には「父親由来か母親由来、いずれか一方の特徴しか受け継がないように制御されたもの」があります。これにあたる多型が存在する場合、例えば「鼻はお母さんそっくりだけど、目はお父さんそっくり」のように、特徴の一部が両親どちらかに似ることがあると思われます。
産婦人科医として働く中で感じる「異性の親に似る部分」についてもお話ししますね。
◎父親から遺伝するもの
糖尿病になりやすい形質である「インスリン抵抗性(インスリンの効き目が悪い=血糖値が下がりにくい状態)」は、父親から遺伝すると考えられています。女児の場合、これは排卵にも影響するとされ、父親に糖尿病があると、娘は多嚢胞性卵巣(排卵が起こりにくい状態)になりやすい、というのは経験上感じるところです。
男性ホルモン受容体の遺伝子はX染色体にありますが、父親のX染色体は男児には受け継がれませんので、X染色体に関することは、異性である女児にしか遺伝しません。その点は「異性に遺伝する」と言えます。
◎母親から遺伝するもの
エネルギー産生に関わり、筋肉の発達に関係する「ミトコンドリアDNA」は、母親からしか遺伝しません。ミトコンドリア自体は男児にも女児にも遺伝しますが、男児の方が筋肉のつき方が顕著ですので、分かりやすいです。母親の筋肉量が多い場合、男児の筋肉も多くなりやすいので、パワー系の競技には有利な形質と思われます。
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