北陸甲信越地域でカフェのオーナーを務める酒田美保さん(38=仮名)は、出産後の30代前半から銅付加IUD(子宮内避妊リング/ノバT380)を利用しています。IUDは装着後最長5年間、受精卵の着床を阻害して妊娠を防ぐ効果や緊急避妊効果があり、ピルに迫る高い避妊成功率が報告されています。子育てをしながらカフェを1人で切り盛りする酒田さんに、IUDを使用するようになったきっかけや、長期間使用して感じるメリットやデメリットについて体験談を伺いました。(取材:松原渓編集部員)
(※)ノバTは2024年末をもって販売中止となり、交換時の代替品としてIUS(子宮内避妊システム/ミレーナ)が推奨されています。
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カフェオーナーの酒田美保さん(画像はイメージです)
大好きなお酒を飲むために、ジョギングと健康食を心がけて
カフェを開業して、今年で7年目になります。週6日、ランチからディナータイムまで営業していますが、おかげさまで多くの地元のお客様にも知っていただけるようになり、常連さんも多くなりました。前夫と離婚して、今は中学生の娘と、2年前に出会ったパートナーとの3人暮らしです。
朝はランチやテイクアウトのお弁当の仕込みなどで早起きをしていますが、最低でも週1回は、早朝に7キロを走っています。サウナも大好きで、週1回は必ず通っています。たくさん汗をかいて、体の中の悪いものをデトックスできる感じがして、本当に気持ちがいいんですよ。
私も彼もお酒が好きで、夜、飲みながらご飯を美味しく食べていたら2人とも太ってしまったんです。洋服のゴムがお腹に食い込んで着られない服が出てきてしまったので、ダイエットを始めました。昼は玄米、納豆、鮭などを食べて、MCTオイルも使っています。夜はお酒を飲むので、炭水化物は控えめにしています。サプリメントにも興味があっていろいろ試しているのですが、最近は美容液などで話題の「リポゾーム」技術を使ったビタミンCを飲み始めました。ビタミンCは利尿作用があって排出されやすいものですが、「リポゾームだと吸収力がいい」とSNSで見たのがきっかけです。ホワイトニング効果が高く、シミに効くハイチオールCも飲んでいます。
10代、20代の頃の体調と比べると、疲れやすくなりましたね。昔はほとんど寝ないでお店に出ても平気だったのに、今は、最低8時間は寝ないとリセットできませんから。ここ2、3年で抜け毛の量が多くなったことは気になっています。もともと毛量は多い方なのですが、髪を乾かしている時などにかなりの量が抜け落ちてしまうんです。母も同じぐらいの年齢から抜け毛が増えたと言っていましたが、私も女性ホルモンが減っているのかな?と、時々心配になります。
6年前からIUDを使用するように
避妊リングを使用し始めたのは6年前です。妊娠を望んでいなかったことと、他の避妊方法と比較して決めました。避妊というとコンドームの使用が一般的だと思いますが、いざという時に相手が持っていない場合もありますし、かといって、自分が常備しているのもどう思われるかわかりません。コンドームを探したり、装着するまでにせっかくのいい雰囲気が失われてしまったり、装着した後に破れて避妊が失敗したりする(失敗率は2〜15%)不安もありました。その点、避妊リングは避妊率が高い(99%以上)ので安心感がありますし、長い目で見ればコストも高くはないと思います。費用は5万円ぐらいで、プラス診察料と施術料がかかったと記憶しています。昨年の6月に入れ替えたのですが、交換する際の抜去費がプラスで1万円ほどかかりました。コンドームをつけないと性病にかかるリスクもあるので、併用した方がいいそうですけれど、私はIUDでこれまでに避妊に失敗したことはありません。
ピルという選択肢もありましたが、性格的に飲み忘れると思いましたし、以前、緊急避妊ピルを飲んだ時に副作用で具合が悪くなった経験があるので、怖さがありました。それで、婦人科に行って医師に希望を伝えたら、医師からIUDを勧められました。
昔の避妊リングのイメージは半球体のカップみたいなものだったのですが、実際に見ると、それとは違って、T字型の避妊具に銅が巻きつけられたものでした。同じぐらい避妊効果が高くて、月経困難症の人は保険適用になるミレーナ(IUS)を入れる人が多いそうですが、私はその医師から「生理痛がありますか?」などと聞かれることはなかったので、IUD一択でした。生理痛がないわけではないですし、IUDは今年いっぱいで販売中止されるそうなので、次の交換時期が来たら、IUSへの交換も検討しようと思っています。
当時はまだ珍しかったIUD。副作用で経血量の変化も
IUDを最初に装着した時には、医師から「避妊効果は高いけれど、副作用で生理の量が増えるかもしれません」と説明を受けました。それはいただいた書類の注意書きにも書いてあったので、覚悟していました。
IUDを使い始めてから、避妊に失敗することもなく、困ったことは特にないです。ただ、入れてからしばらくはやはり経血量が増えて、最初は大丈夫かな?と不安になるぐらいの量でした。一番変わったのは生理のサイクルで、それまでは生理2日目の量が多かったのですが、今では最初の方は量が少なくて、後半に経血量が多くなって、生理が終わる感じになりました。それでも昔に比べたら全体的に経血量は減りましたが、加齢によるものかもしれないなと感じています。
印象に残っているのは、頭痛で病院に行ってMRIを取った際のことです。注意事項のビデオで「避妊リングは映像で引っかかるかもしれないから注意が必要」と説明されました。IUDは銅がついているので先生に申し出たら、当時はまだ珍しかったらしく、装着した理由などいろいろと質問されて、施術した産婦人科に電話して確認を取り、結果的には装着したままMRIを撮ることができました。ただ、MRIの先生からぶっきらぼうにいろいろと聞かれたのはあまりいい気分ではなかったです。
その後、定期的な検診はしていませんでした。「1年に1回チェックしましょう」と言われていたのですが、仕事の忙しさを理由に、行かなくなっていました。ただ、今年はちょうど5年目だったので、子宮頸がん検診に行くときに「IUDの交換もお願いします」と伝えて交換してもらいました。今後は、ちゃんと定期検診にも行こうと思っています。
思い返せば、私は23歳で妊娠するまで、婦人科やレディースクリニックには一度も行ったことがありませんでした。だから、初めて検査した時は相当な勇気が要ったのを覚えています。検尿しなければいけないのに、あまりに怖くて尿が出なくなってしまったぐらい、緊張していましたから。今はもう慣れましたが、問診で済むことなら、病院に行かずにオンラインで処方してもらえるとありがたいですね。産婦人科に行ったら内診で股を開かなければいけないというイメージがあるから、気持ち的にも怖いし、行きづらい人はいると思います。たとえば緊急避妊薬などが必要な人や、薬の処方だけならオンラインでもできるようになればいいと思います。個人的には、美容のシミが消える治療薬などがオンラインで処方してもらえるようになったら嬉しいですね。
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更年期に備えつつ、マイペースに働き続けたい
出産を経験して、これ以上の妊娠を望まない女性や、コンドームに抵抗がある人には避妊リングはお勧めです。ただ、特定のパートナー以外と関係を持つ可能性がある場合は、性病のリスクも含めて、よく考えて決めてほしいです。避妊リングについて、産婦人科やレディースクリニックで相談したくても恥ずかしくて踏み出せない人もいるかもしれませんが、レディースクリニックはいろんな理由で行く人がいるし、医者は何人もの患者を見ているプロだから、気にせず、勇気を出して行ってみてください。
今はピルで生理痛が緩和できて、ニキビができやすい人も治ることがあると聞いて、驚きました。私は「生理=悪いものがデトックスされる」というイメージを持っていたので、ピルでそれを止めてしまうのは大丈夫なのかな?と、漠然とした不安を持っていたんです。副作用で浮腫んだり、太ったりしてしまうイメージもありました。いろいろな人の体験談を聞いて、そういうメカニズムがもっと自然なものとして理解できるようになれば、さらにピルが身近なものになると思います。
更年期は個人差もあると聞きますが、どんな感じなんだろう?と怖さもあります。40代から50代ぐらいの女性がお店で飲み会をしている時に、冬でもみんな「暑い、暑い」と汗をかいていて。私もいずれそういう症状が出てくるのかなと覚悟はしています。
今後も健康を大切にしながら、自分のお店を細く長く続けていければ嬉しいです。「お店が大繁盛してものすごく儲けたい」とか、そういうことは考えていなくて、自分のペースで働いていけたらいいと思っているんです。おばあちゃんになった私が心を込めて作ったラーメンを食べて、お客さんが笑顔になってもらえるような、アットホームな地元の食堂であり続けたいですね。
【Profile】酒田美保(仮名)
北信越地方出身。シングルマザーとして中学生の子どもを育てながら、カフェのオーナーを務める。避妊リングの使用を考えて産婦人科を受診し、医師から勧められた銅付加IUD(子宮内避妊リング/ノバT380)を使用している。
取材後記(松原 渓)
地域に根付いた人気カフェを経営する酒田さんは、朗らかで親しみやすく、常連さんが多いのも納得の看板オーナーでした。避妊を望む女性たちにとって現代は様々な選択肢がありますが、避妊リングは非常に有力な選択肢になると、今回の取材を通して改めて感じました。愛するパートナーとの時間を楽しむことと、望まない妊娠を避けること、どちらもとても大切なことだと思いますが、避妊具によって、成功率や副作用には大きな差があります。避妊リングは、IUSもIUDも、一度装着すると5年間交換しなくていいことは魅力的なメリットだと感じます。自分のライフスタイルとの適性も考えて合ったものを選択すれば、仕事をしながら女性が自分らしく輝き続ける力強い味方になりそうですね。
酒田さんが使用しているノバT=IUDは販売中止が決まっているため、今後はIUSのシェアが広がりそうですが、今後、ノバTに変わる新たな商品が発表される可能性もあると思いますので、注視していきたいと思います。
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