16歳で、現在高校2年生の津田アオイさんは、2年前から超低用量ピル「ヤーズフレックス」を服用しています。ヤーズフレックスは、低用量ピルに比べてエストロゲン(卵胞ホルモン)の含有量が少なく、長期間服用できる混合ホルモン剤として、月経困難症や子宮内膜症の保険治療に用いられています。低用量ピルとは異なり、避妊効果は認められていません。
従来の低用量ピルは21日間実薬を内服し、7日間休薬するサイクルで、生理を28日周期に整えますが、ヤーズフレックスは実薬の内服期間を延ばして休薬回数を少なくすることで、生理の回数自体を減らす効果が期待されます。出血が起きない場合は最長120日間まで連続投与することができ(4日間休薬するので124日周期)、年間の生理を3〜4回まで減らせるケースもあります。
津田さんは、なぜ中学生3年生からピルを服用するようになったのでしょうか?そのきっかけとなった出来事や、ピルケアを続けてみた感想等、心身ともに変化する高校年代のリアルライフを語ってもらいました。(取材:松原渓編集部員)
(※)未成年のプライバシー保護の観点から、仮名を使用しています。
ピルに興味を持ったきっかけは高校受験
普段は運動や食事のことなど、あまり意識せずに生活しています。毎日、ご飯がすごく美味しくていくらでも食べられますし、食べることが大好きなので、「食べ過ぎないようにしなきゃ」と思っているのですが(苦笑)。
私は中学の頃から生理痛が重くて、「生理だから、今日は学校休みたいな」と思うことがよくありました。気持ち的に落ち込んでしまい、そんなに痛くなくても「生理だからしょうがないよね」と思ってしまうせいで、やりたいことがうまくできないこともありました。それで悩んでいたのですが、ピルケアを始めてすごく楽になったんです。
中学3年生の時に、生理痛がひどい中で高校受験を迎えるのが不安で、調べてみたら、「痛みを和らげるためにピルという手段がある」と知りました。ピルは中学の保健の教科書にも載っていましたし、意外とみんな使っているのかな、と思っていましたが、受験の時など、「大事な時に生理の日にちをずらすために使う人も多い」と知ったんです。それで、母と一緒に病院に行きました。母にはそういう悩みも相談しやすく、困ったことや不安なことがあると、いつも一番最初に話しています。
産婦人科の先生に受験で生理痛が不安なことを相談したら、「そういう時はピルを使ったほうがいいよ。みんなピルの効果についてもっと知っていくべきだと思うし、津田さんも使ってみたら?」と、勧めてくれたんです。先生が処方してくれたのは「ヤーズフレックス」というピルで、飲み始めたのは中学3年生の前期でした。
「私のような中学生が婦人科や産婦人科に行くと、間違ったイメージを持たれやすいんじゃないかな?」と、最初は心配もありました。でも、病院で周りを見ると意外と若い方が多く、診察室では先生が丁寧に説明してくれたので、不安にはならなかったです。
生理が減って不安解消!友だちとも知識を共有
薬は、毎日決まった時間に1錠飲んでいます。出血が起きたら4日間休薬して、また出血が起きるまでは飲み続けるというサイクルです。最長で120日間服用できて、生理が来ない期間をそれだけ延ばすことができるそうですが、私は飲み始めて2カ月目ぐらいで、最初の出血が起きました。その後は、同じぐらいのサイクルが続いて、生理は2カ月に1回ぐらいになりました。それまで毎月生理が来るのが嫌だったのですが、半分以下になって、生理痛も軽くなったのは嬉しかったです。「生理が来たら嫌だな」と心配することがなくなりましたし、「受験の日と重なって、うまく力が出せなかったときに、生理を言い訳にしてしまうのではないか」という、心理的な不安もなくなりました。
ただ、毎日飲み続けることに慣れるのは少し時間がかかりました。つい忘れてしまうことがあって、旅行の時も持っていかないといけません。忘れないように、寝る前に必ず通る場所に置いているのですが、やっぱり毎日は難しくて、飲み忘れた時には予定よりも少し早く生理が来てしまったりもしました。
私のクラスは女子が多いので、生理や、女子特有の悩みもみんなで話しやすい環境です。私がピルケアをしていることや、使った感想も友達に話したりしています。「ピルは避妊に使うもの」というイメージが強い子もいますが、話をすると「良さそうだね」とか「私も使おうか迷ってるんだよね」という子の方が多くて、「副作用はあった?」と積極的に質問されます。ピルを使っている人が知識を身につけて、周りの人にしっかり説明できれば、変な偏見を持たれることもなくなるんじゃないかと思います。
自分だけではどうしても病院に行きづらいと思いますが、まずはお母さんや友達などに相談するといいと思います。不安があっても、「いいじゃん!」と背中を押してもらえれば、一歩を踏み出せると思いますから。生理痛で悩んでいる子たちがピルをうまく活用できるようになったら、生理を言い訳にしなくて良くなると思いますし、もっと気兼ねなく使えるようになったらいいな、と思います。
海外留学中は服用を中断。帰国後に再開のタイミングを考えたい
高校では、AIやITを使って自分の興味ある分野について3年間研究する部活動に力を入れています。これから1年間アメリカに留学に行くので、部活動で学んできた研究テーマを留学先でもしっかり探究したいと思っています。
留学先では、定期的に病院に通院することが難しくなりますし、海外では薬を服用し続けることができなくなる場合もあると思っています。それで、一旦ヤーズフレックスの服用を中断して、留学先ではピルなしの状態で1年間過ごすつもりです。帰国したら、また再開のタイミングを考えようと思っています。
私の母は日本の伝統文化に関わる仕事をしているのですが、文化はテクノロジーとの融合でもっと発展していける分野だと思うので、将来的には、私なりに文化についてもっと探求していきたいと思っています。
【Profile】津田アオイ(仮名)
2007年生まれ、16歳(高校2年生)。生理痛が重く、中学3年生から超低用量ピル「ヤーズフレックス」を2年間服用し、心配していた高校受験もクリア。2024年夏から1年間アメリカに留学予定(取材時点)。留学中は服用を中断し、帰国後にまた再開したいと考えている。
取材後記(松原 渓)
津田さんのように、受験期の生理痛に悩んでいる学生は少なからずいると思いますが、一方で、中学生からピルを飲んでいるケースはまだまだ少ないのが現実だと思います。ただ、今回の取材を通して、ピルが避妊だけでなく、生理痛の緩和や子宮内膜症に効果を発揮することを知れば、「積極的に使いたい」と思う女性は意外と多いのだと感じました。
正しい知識を得れば、低用量ピルや超低用量ピルは、女性たちの強い味方になってくれるはず。フェムライフは、今後もこうした貴重な体験談とともに、信頼できる医師との出会いや、副作用も含めた正しい知識を共有できる輪を広げていきたいと思います。津田さんのアメリカでの挑戦にも乞うご期待です!
みらい編集長より
松原編集員と一緒に、津田さんを取材させていただきました。取材時点で津田さんは約1ヶ月後に留学を控えており、既にピルの服用は中断されているとのことでした。
健康上、ピルの服用を中断することになんら問題はありません。しかしながら、海外留学に際して必ずしもピルケアを中断する必要があるわけでないことは、強調しておきたいです。
渡航先によっては、安定的にピルを入手できるとも限りません。ご自身のカラダを大切に考え、事前に判断をした津田さんは、とても立派だと思います。
一方で、国によっては日本よりも安価に、手軽に、ピルが手に入る場合もあります。
またピルケアを中断したことで、服用中は起こり得なかった卵巣のトラブル等が起こる可能性も否めません(ピルケア中は排卵が起こらないため、卵巣のトラブルはほとんど起こりません)。
津田さんのように長期間海外に滞在する予定のある方は、医師に相談の上、ピルケアを続けられる方法を探ることも考えてみてください!
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